令和4年度 第4回 ことばのお話

谷口 美佳 先生(心理士・こども家庭局こども家庭センター担当課長)

こども家庭センターには、お子さんの様々なことで心配になられたお父さんお母さん方が相談に来られます。小さいお子さんの場合、ことばが遅れているのでは?と気になって来られる方も多いです。ことばは他の様々な力と関連しながら発達します。認知(物事をどう捉えるか)、模倣、コミュニケーション力、社会性、身辺処理、運動等々‥人は全体として発達するものですので、決してことばだけが単独で発達するということはありません。今回はそんな「ことば」についてのお話です。

 

赤ちゃんは9か月から10か月頃になると指さしをするようになります。「あっ!あんなところにあんなものが!」といった感じで、驚きや感動を伴って指さしの動きが出てきますよね。そして、この指さしは「見て!見て!」と言っているかのように何度もするようになり、親の顔を見てニコッと笑いながらするようにもなるので、可愛くてたまりませんね。こうした指さしを通して、親と子どもの間には[共感]のようなものが生じてきます。そして指さしは要求などと結びつくようになり、自分の意図を相手に伝える[手段]として使われるようになっていきます。コミュニケーションの手段として機能し始めたことになり、やがてことばが育っていくための土台となっていきます。

 

ことばが出始め増えてくるに伴い、指さしはだんだん補助的なものになっていきますが、まだことばが出る前の子どもにとって、指さしはとても重要な交流手段です。ですから、子どもが指さしを使った際には、できるだけきちんと注意を向けてあげ、我々大人の側も意識してことばかけをしながら指さしを使うようにしていくことがとても大切です。

 

ことばが出てくるためには、その前段階として色々な声が出てくることも大切です。通常は1歳を超えると発声の量や種類が急激に増え、「マンマ」や「ワンワン」など幾つかのはっきりしたことばも出てきますが、その背景にはそれとは比べ物にならないぐらいの[訳の解らないことば(発声)]があります。その一見意味のない様々なお喋りの中から意味を持ったことばが出てくるので、この[訳の解らないことば]も大切です。

 

お子さんが声を出したら、とにかく反応してあげましょう。たまたま発声したことば(音声)をまねて返してあげましょう。また、お子さんを座布団に乗せて左右にゆっくり揺らしながら「ゆ~らゆ~ら、ぶ~らんこ」とか、「高い高~い」とか、お腹や脇をくすぐって「きゃっきゃっ」と声が出るような、情緒に訴えかける遊びを多く取り入れてみましょう。声やことばを出すことで親が反応してくれてとても楽しい気持ちになる体験、そんな楽しさを共有することで、お子さんはもっと声を出したい、話したいと思うようになるのです。

 

発達には個人差があります。焦らずゆったりとお子さんを見守り関わってあげましょう。

谷口 美佳 先生(心理士・こども家庭局こども家庭センター担当課長)

臨床心理士、公認心理師。神戸市では心理判定員を務める。2016年度より、こども家庭センター判定指導担当課長として、あらゆる子どもの相談に関して、心理的な視点から職員へのスーパーバイズ、児童心理司の統括、育成に携わる。心理的観点と現場経験から感じた子育てに関するコラムを執筆予定。

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