令和4年度 第14回 「しつけ」と「ことばかけ」のお話

谷口 美佳 先生(心理士・こども家庭局こども家庭センター担当課長)

「神戸ママフレ保健室」では、子育てに関して「興味がある」「読んでみたい」コラムのテーマを募集しました。今回のコラムは、皆さんからご応募いただいた中から「しつけ」と「ことばかけ」についてお話したいと思います。

 

お父さんお母さん方が日々子どもと関わる際に悩まれる話として、「しつけ」の話があります。所謂、礼儀作法を身につけさせる「しつけ」だけでなく、「してはいけないことはしない、そして望ましい行動をしてくれる子に」育って欲しいし、それにはどう関わればよいかということかと思います。今回は、子どもをやる気にさせる「ことばかけ」や、しつけ等の際にどういったことを意識して関わるとよいかといった視点でお話します。

 

子どもをやる気にさせることばかけにはどんなものがあるでしょうか。例えば子どもが少し成長して自分で何かができた時に、「えっ!すごい、○○ちゃん、そんなことできるんや!」と驚いて見せるとか、「○○ちゃん、ちょっと手伝ってくれないかな。」とできそうなことをお願いし、結果は多少不十分でも「ありがとう、助かるわ。」と褒めてあげるなど、皆さんもお子さんとの関わりで、子どもをやる気にさせる色々な工夫をされていると思います。

 

では、普段の子どもの行動で、親が叱らないといけない場面を少し考えてみましょう。例えば、子どもがお手伝いで親に何か物を手渡す場面があり、その際にきょうだいがふざけて邪魔し、子どもがイラついて手渡そうとしていた物を放り投げたとします。そんな時「投げたらダメでしょ!」と怒って、親が投げられた物を拾って終わり、絡んできたきょうだいにも特に関与しないという状況を想像してみてください。

 

投げることはよくないことと教えたとしても、「ダメ!」で終わると、否定的なことばかけのまま終わってしまうことになります。恐らく投げた子どもは、叱られたことはわかっても、邪魔してきたきょうだいや、そこを取り合わず悪い行動だけを叱った親に対し、余計にイライラしてしまったり、もしかしたら「自分ばっかり怒られる」と被害的に受け止めたりすることもあるかも知れません。

 

もし、同じ場面で「○○ちゃんはちゃんと渡そうとしてくれてたのに、△△ちゃん(きょうだい)が間に入ってきちゃったからイライラしちゃったね。でも投げられると悲しいよ。(投げられた物を指し)これ大事!お母さん(お父さん)にそっと渡してね。○○ちゃんならできるね。」と言ってあげるとどうでしょう。

 

きょうだいが邪魔したことを親はちゃんと知ってくれており、物を投げた行動の裏の気持ちも親が察してくれていること、でも投げるのはよくない行動であること、では正しい行動としてはどうすればよかったのかということ等が、子どもにわかりやすく入りやすいのではないかと思います。そして何より、ことばかけが否定では終わっていません。
 また、できれば、親が拾って終わりでなく、投げられた物を指さし「それ、どうすればいいかな。お母さん(お父さん)待ってるよ。」と言って待ってあげると、次に子どもは自分で拾ってそっと渡してくれるといったことも多く、それができたら、「すご~い!さすが○○ちゃん。」と褒めてあげることで正しい行動まで導いて完結させることもできます。

 

投げた物を子どもに拾わせるのは、子どもの取った良くない行動を叱られた失敗体験のまま終わらせず、望ましい行動を伝えて展開させ、最後に褒めて終わらせることでより良い行動の強化にも繋がるからです。また、この時まだ気持ちの立て直しが出来ていなかったり、年齢によっては行動の修正が不十分だったりすることもあるかも知れません。そんな時もそのことを指摘せず、親が手伝って一緒に行動し最後まで達成させ、成功体験に繋げてあげることも大切です。

 

ことばかけは否定で終わらせない、良くない行動でも子どもの行動の裏の気持ちを理解していることを伝える、より良い行動を伝え少し手伝ってでも叱られ体験を成功体験に変えてあげる。そうしたことを少し意識してみてください。ことばは子どもの心を動かします。是非、お子さんに合う素敵なことばを探して、ことばかけをしてみてください。

谷口 美佳 先生(心理士・こども家庭局こども家庭センター担当課長)

臨床心理士、公認心理師。神戸市では心理判定員を務める。2016年度より、こども家庭センター判定指導担当課長として、あらゆる子どもの相談に関して、心理的な視点から職員へのスーパーバイズ、児童心理司の統括、育成に携わる。心理的観点と現場経験から感じた子育てに関するコラムを執筆予定。

次回:12/9(金)配信予定 北林 久仁子 先生(保育士・こども家庭局担当部長)

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井窪 薫 先生(精神科医・4児の母)

精神保健指定医、産業医。4歳、2歳、1歳、0歳を子育て中。長女の子育て中に大学院に通い、医学博士、精神科専門医を習得。現在は兵庫県内で企業の産業医をしながら、精神科医の子育てアドバイスなどのセミナーも行っている。

北林 久仁子 先生(保育士・こども家庭局担当部長)

神戸市公立保育所保育士、主任、所長を経て、2022年度より、こども家庭局指導研修担当部長として、保育所・幼稚園・認定こども園などで乳幼児保育・教育に関わる職員の研修の企画運営等に携わる。これまでの保育現場での様々な出会いや今の仕事で気づいたことなどについて、コラムを執筆予定。

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2022年度より、神戸市こども家庭局母子保健担当課長として、妊婦健診・乳幼児健診をはじめとした、思春期、妊娠から出産、乳幼児の子育てなどに関する母子保健施策に携わる。妊娠期やお子さんの乳幼児期に利用できる行政サービスについて、コラムを執筆予定。

谷口 美佳 先生(心理士・こども家庭局こども家庭センター担当課長)

臨床心理士、公認心理師。神戸市では心理判定員を務める。2016年度より、こども家庭センター判定指導担当課長として、あらゆる子どもの相談に関して、心理的な視点から職員へのスーパーバイズ、児童心理司の統括、育成に携わる。心理的観点と現場経験から感じた子育てに関するコラムを執筆予定。

渡辺 雅子 先生(歯科医師・健康局保健所保健課 口腔保健支援センター長)

日本口腔衛生学会専門医、医学博士。2002年度より、神戸市保健所の行政歯科医師として、妊婦、乳幼児から高齢者まで全年代の歯科口腔保健を推進している。就学前のこどもでは、乳幼児健診や保育所(園)等でのフッ化物洗口などに携わる。こどもの歯と口の健康づくりについて、コラムを執筆予定。