令和4年度 第6回 子どものきもち

北林 久仁子 先生(保育士・こども家庭局担当部長)

近所の友だちや公園で、同じ年齢くらいの子どもと一緒に遊び始めたうちの子どもが、おもちゃを譲ってあげない、貸し借りができない、また逆にすぐに譲ってしまう…。どんな子どもの姿も、これでだいじょうぶかな?と親としては不安になられることかと思います。親同士がとても親しく率直に言い合える関係だと良いのだけれど、さほど親しくない相手だと一層気を遣いますよね。子どもの育ちの心配と相手への気遣い。親になるとは本当に大変なことだと思います。

 

園で出会った2歳から3歳くらいまでの子どもたちは、よく取り合いもしますし、譲れないことも多いです。まだ生まれて数年の子どもの立場に立てば、先の見通しが持てないだけに、今、その玩具を手放したら2度とお目にかかれないかもと思うのかもしれませんね。また、一つの物で夢中に遊んでいるとき「お友だちが欲しがっているから貸してあげて」というのは、例えば夢中でゲームをしていて、ここでは声をかけてほしくないという瞬間、また、スポーツを見ていて、まさに得点が入る時に邪魔をされるといった、大人でも我慢できないような場面にも似ていますよね。

 

保育園などでは集団で過ごしているだけに、どうしても「交替ね」とか「順番ね」と簡単に言ってしまいがちなのですが、本当は気が済むまで遊んでから交替できる方がいいのだと思います。十分満足する時間があって、徐々に友だちが意識できるようになり、一緒に遊ぶことが楽しくなると、子どもたち自身が自然に交替や貸し借りを選ぶようになります。それまでは「○○ちゃんもしたいって、貸してあげられる?」と尋ねるなど人の思いに気付かせることや「貸してって言ってみようか?」と方法を教えることはしても、貸してあげられる子どもが良い子で、そうでない子は悪い子と思わせるような関わりは避けるようにしています。また、幼い子どもであればあるほど、子どもと同じ数だけのおもちゃを用意することや、やりたいことをそれぞれが十分にできるように空間を分けるなど、大人側の配慮を考えます。まずは自分の気持ちを十分に出して、それを大好きな大人の人に受け入れてもらえることが、いずれ本当に人の気持ちが分かることにつながるのだと信じています。

 

また、強く自分を出す子ども、心配になるくらいあっさり譲ってしまう子どもなど、子どもの姿は様々です。我が強いと思われる子どもはしっかりと自分を主張できるし、夢中になれるものを見つけ何かを成し遂げるかもしれません。またすぐに譲ってしまう子どもは相手の気持ちへの共感性を強く持って生まれていて、人に寄り添う仕事に向いているのかもしれません。どの子どもも、誰かと同じではない、その子どもにしか咲かせることのできない花や、結ぶことのできない実をもって生まれてきていると思うとワクワクしますね。それぞれの個性をそのまま「素敵だね」と温かく見守り応援することを大切にしていきたいなと思います。

北林 久仁子 先生(保育士・こども家庭局担当部長)

神戸市公立保育所保育士、主任、所長を経て、2022年度より、こども家庭局指導研修担当部長として、保育所・幼稚園・認定こども園などで乳幼児保育・教育に関わる職員の研修の企画運営等に携わる。これまでの保育現場での様々な出会いや今の仕事で気づいたことなどについて、コラムを執筆予定。

次回:8/12(金)配信予定 丸山 佳子 先生(保健師・こども家庭局家庭支援課担当課長)

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井窪 薫 先生(精神科医・4児の母)

精神保健指定医、産業医。4歳、2歳、1歳、0歳を子育て中。長女の子育て中に大学院に通い、医学博士、精神科専門医を習得。現在は兵庫県内で企業の産業医をしながら、精神科医の子育てアドバイスなどのセミナーも行っている。

北林 久仁子 先生(保育士・こども家庭局担当部長)

神戸市公立保育所保育士、主任、所長を経て、2022年度より、こども家庭局指導研修担当部長として、保育所・幼稚園・認定こども園などで乳幼児保育・教育に関わる職員の研修の企画運営等に携わる。これまでの保育現場での様々な出会いや今の仕事で気づいたことなどについて、コラムを執筆予定。

丸山 佳子 先生(保健師・こども家庭局家庭支援課担当課長)

2022年度より、神戸市こども家庭局母子保健担当課長として、妊婦健診・乳幼児健診をはじめとした、思春期、妊娠から出産、乳幼児の子育てなどに関する母子保健施策に携わる。妊娠期やお子さんの乳幼児期に利用できる行政サービスについて、コラムを執筆予定。

谷口 美佳 先生(心理士・こども家庭局こども家庭センター担当課長)

臨床心理士、公認心理師。神戸市では心理判定員を務める。2016年度より、こども家庭センター判定指導担当課長として、あらゆる子どもの相談に関して、心理的な視点から職員へのスーパーバイズ、児童心理司の統括、育成に携わる。心理的観点と現場経験から感じた子育てに関するコラムを執筆予定。